2016年(後期)テーマ  「ユング 『黄金の華の秘密』への注解 を読む」(全4回)

平成28年9〜12月 原則各月第1木曜日(全4回を予定)

 今年前期スタディでは、論文「心的エネルギー論について」(1928年)を読み進めてきましたが、この論文が書かれたまさにその年、ユングは大変な衝撃を与えた一冊の本がありました。中国の道教のテキスト「黄金の華の秘密」です。ユング後半生における東洋研究、錬金術研究、キリスト教研究は、この出会いから始まることになります。

 

1959年

 私はこの本「赤の書」に16年間にわたって取り組んだ。1930年に錬金術と出会ったことが、私のこの本から遠ざけた。終わりの訪れは1928年にやって来た。そのとき、ヴィルヘルムが、錬金術的な性格の小冊子「黄金の華」のテキストを私に送ってくれたのである。その本の内容に現実への道筋を見出し、私はもはやこの本に取り組むことができなくなった。・・・

               (ユング「赤の書」邦訳テキスト版p.645、河合隼雄監訳、創元社 2014.8) 

 

 出会いの翌年となる1929年、ユングは「黄金の華の秘密」ドイツ語訳出版の際に、この書への詳細な注解を寄せます。後期スタディでは、この注解を取り上げることで、ユングの人生中盤に起きた大きな思想的変化を読み解き、そこからユング思想についての全般的な見取り図を模索していきたいと思います。

 

■ 進行役:白田信重、山口正男、岩田明子 (ユング心理学研究会)

 

  インストラクター: 白田 信重 

 

白田 信重

 ・ 「白田石材店」代表取締役社長。当研究会会長代行。

 ・浅草で 100年の老舗石材店「白田石材店」の第四代目社長。早稲田大商学部卒。

 

@山口正男

 原子力関連エンジニア。原子力規制業務に従事。超自然研究会。

 

岩田明子

 心理カウンセラー、心理占星術研究家、バッチフラワーセラピスト、ドイツ語翻訳家

 

 

 テキスト

  ユング、ヴィルヘルム共著『黄金の華の秘密』

       湯浅泰雄・定方昭夫訳、人文書院、1980.3

 上記テキストのうち、ユング自身の著作となる部分を主に取り上げます。

   第二版のための序文 p.7-10

   リヒアルト・ヴィルヘルムを記念して p.13-30

   ヨーロッパの読者への注解 p31-111

   ヨーロッパのマンダラの例 p.112-122

 テキストを持っていなくても参加できますが、持参することを推奨します。

 

 

 参考テキスト

 上記邦訳のドイツ語原文、並びに英訳文を参考にします。いずれも全集版です。

 必要と思われる部分について抜き出し、取り上げる当日に参加者に配布します。

 

 進行スケジュール(仮)

 9月  オリエンテーション

     「第二版のための序文」p.7-10

     「リヒアルト・ヴィルヘルムを記念して」p.13-30

 10月 注解「序論」p31-51

 11月 注解「基礎概念」「道の諸現象」p.51-82

 12月 注解「対象からの意識の離脱」「完成」「結論」p.83-111

    「ヨーロッパのマンダラの例」p.112-122

 

 

 

 

  内容

第一回

9月1日

  まず前半のオリエンテーションにて、フロイトとの決別から、第一次世界大戦、『赤の書』『タイプ論』「心的エネルギー論」、そしてこの『黄金の華の秘密』注解に至るまでのユングの思想の流れを整理します。『黄金の華の秘密』注解がユング思想の中で占めている位置を見ていきます。

 後半では、「第二版のための序文」および「リヒアルト・ヴィルヘルムを記念して」を読み進めていきます。ここで重要となるのは、「リヒアルト・ヴィルヘルムを記念して」において、ユングが公の場で初めて共時性概念に触れているところでしょう。共時性の概念は、前期スタディで取り上げた「心的エネルギー論について」の内容と、実のところ密接に関係しています。そうした部分を読み解いていければと思います。

第二回

10月6日

  初回となる前回9月のスタディでは、全体のオリエンテーションの後、「第二版のための序文」「リヒアルト・ヴィルヘルムを記念して」を読み進めました。

 ユングの前半生に大きな影響力を持った人物がフロイトであるなら、後期ユングに決定的な方向付けを与えたのは友人の中国学者ヴィルヘルムでした。フロイトとの決別以降、自身の内的体験を通して知見を練り上げていたユングは、ヴィルヘルムが送ってきた小冊子『黄金の華』のテキストに自身の経験の類似物を見出し、これを通して自身の知見を外部へと公表するための手がかりを得ることになります。またヴィルヘルム訳の『易経』は、ユングの共時性理論の形成に重要な役割を果たしました。

 そしてヴィルヘルムの早逝を、ユングは、東洋と西洋との間のカルチャー・ギャップによる精神的葛藤に起因するものだと受け取りました。この友人の死が、ユング後期における東洋思想・西洋思想研究に決定的な影響を与えたことを前回は取り上げました。

 

 第2回スタディでは「注解」の序論(p31-51)を読んでいきます。ここでユングは、当時の西洋人における東洋思想の受容のありかたについて問題点を指摘し、東洋思想の理解に現代の深層心理学がその理解の助けになるとします。その上で、人間が成長し変化するとはどういうことか、またそれはどのような作業を通してなされるかについての、ユング自身の見解が示されていきます。

 前回と同じく、ポイントとなるパラグラツについては、邦訳をドイツ語原文・英訳文と比較対照しつつ読み進めていきたいと思います。

 

第三回

11月10日

3日は祭日の為

 10月6日の第2回スタディでは、「注解」の序論(p31-51)を取り上げました。ここでユングは、20世紀初頭の西洋におけるカウンターカルチャー運動を念頭に、東洋の瞑想法をただそのまま模倣することの危険性を指摘し、自らが拠って立つ西洋の伝統の上に東洋の知恵を発展させていくべきとします。西洋が知性に与えている高い地位に「第三の心的知能」をつかせることで、よりいっそうの発展の可能性がある、という示唆もありました。

 また、自身の臨床経験と東洋的瞑想との共通点を指摘し、東洋思想の理解に心理臨床の知見が助けになるとしています。人生の重要な問題は原理的には解決しない、ただ成長することによって乗り越えられるだけである。そしてその成長は、その人の持つ「暗い領域」からやってくるものを受容することによって行われる。やってくるものに対して、批判を交えずにただ受け取ることこそが、我々にとっての「真の技術」である、とユングは述べています。短い中にユングの個性化過程論や治療論が凝縮している、大変重要な箇所でありました。

 11月の第3回のスタディでは「基礎概念」「道の諸現象」(p51-82)を読んでいきます。ここでは東洋の瞑想における諸現象と、いわゆる個性化過程の諸象徴との一致が指摘され、東洋的瞑想の持つ心理学的意味が説明されていきます。マンダラ、アニマ・アニムスなどの、ユング心理学ではお馴染みの用語も登場しますが、それらの用語の持つ意味も改めて再検討します。また、次回は特に訳語が重要になりますので、ドイツ語原文・英訳文をしっかり確認しつつ、読み進めていきたいと思います。

 

第四回

12月1日

  1110日の第3回スタディでは、「基礎概念」および「道の諸現象」(p27-63)を取り上げました。

 ユングは中国における「道(タオ)」概念を「真に意識しつつ行くこと」と解釈し、「道の実現」とは分離された意識と生命との再統合のことであるとします。ユングは「道」を、いわゆる個性化・自己実現と相似の過程であると見なしています。

 対立するものの統合とは、ユングにおいては、象徴の中に自己自身を表現してゆく心理的な発達過程のことです。瞑想中に現れるマンダラ、円運動のイメージは、心の中のあらゆる要素が活動を始めたことを意味するとともに、心が自分自身の人格の中心に向うように促し、瞑想中に起きる心の分裂を防ぐ作用があるとされます。

 分裂した無意識の心は、意識にとってはあたかもひとつの別人格であるかのように現れてきますが、その存在を否定するほどその当人を捉えて現実的な影響力を及ぼします。有名なユング心理学用語であるアニマ・アニムスも、こうした人格的な断片的体系のひとつです。こうした無意識的人格の存在を認めていくことで逆に影響力は小さくなり、それが持っている生命力は意識に同化され、ついには意識が解放されるに至ります。

 

 最終回となる12月の第4回スタディでは、「対象からの意識の離脱」「完成」「結論」および「ヨーロッパのマンダラの例」p.112-122を読んでいきます。「道」の過程を通して現れてくる本来的自己への人格の中心の移行、それこそが自己実現であり「道の実現」だとユングは考えます。ユング心理学の想定する心理的発達過程の全体像が描かれる箇所になります。あわせて、ユングが挙げたマンダラの例のいくつかについても検討をしていきたいと思います。

 進行役:白田信重、山口正男、岩田明子(ユング心理学研究会)

 

 

時間:19:00~21:00 (開場は18:30)

会場:中野区産業振興センター(旧称 勤労福祉会館)

 

 

会費:1000円

 

問い合わせ先: jungtokyo_info@yahoo.co.jp(研究会事務局)

 

※セミナー時に撮影した写真を当研究会のホームページやFacebook等のソーシャルメディアに公開する場合があります。あらかじめご了承ください。

 

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