2014年(後期)テーマ 『神話の光と影』


No タイトル・メッセージ 講師

第1回

7月17日

(木)

「神話の現在と現代の神話」

  記念すべきユングサロン第1回の講師をさせていただくことを光栄に思います。

 神話についての思索は、哲学思想の始まりから存在していました。古代ギリシアで西洋哲学の萌芽が現れたとき、合理的な思考方法と対になるものとして、初めて「神話」という言葉と概念とが登場したからです。神話とそれについての思索は、ありとあらゆる思想のネガ/ポジとして常に存在し、影響を与え続けてきました。神話は、決して人文科学の個別のテーマに止まるものではなく、むしろそれ自体が思想の歴史の本流を形成しているのです。

 今回サロンの前半では、神話をめぐる思索の歴史について概観を呈示できればと考えています。後半では、今期のサロン講師となる、なかひらまい、黒川五郎、所れい、小島史明各氏をパネリストにお迎えし、総勢5人にての大パネルトークを行う予定です。

 

白田 信重

第2回

9月18日

(木)

「紀国神話と名草戸畔伝承」

名草戸畔(なぐさとべ)とは、縄文の昔、名草地方(現:和歌山市・海南市)を治めていたと伝承される女性首長のことだ。

名草戸畔は、かつて和歌浦湾に浮かぶ島であった「名草山」を神奈備山として信仰したと伝わり、明治以前まで山の周辺を取り囲むように15社建っていた「中言神社」には、「名草姫・名草彦」が祀られている。

名草地方は現在も穏やかな和歌山湾に面し、縄文弥生の古代、海洋的な民族が暮らす国際的な港であったと考えられている。そんな名草の伝承や神話は、海・太陽・樹木・山・清水にまつわる「精霊信仰」にあふれている。そうした信仰は、海洋性の強い海の民の暮らしから生まれたものだろう。

ユング心理学では、神話を「心的現実」として扱い、史実とは切り離している。しかし、近世になってユングが発見した神話や夢に現れる元型的なモチーフは、はるか古代から人々が体験してきた自然の中での暮らしや祭祀のアナロジーでもあると考えられる。

古代人は、厳しく豊かな自然の中で生きること自体が「神話」そのものであったのではないだろうか。

名草地方の神話を通して、少しでも、夢の時代の片鱗に触れることができればと思っている。

 

なかひら まい

第3回

10月16日

(木)

「有翼交差(ウインド・クロッシング)する神話論理」

 文化人類学者のレヴィ・ストロースによれば、神話と儀礼には、心的世界の表現メディアとして本質的な差異はなく、南アメリカの未開民族の隣り合った部族間で一方の村で神話として表現されていたプロットが、もう一方では祭祀の儀礼として表出されている場合があったということです。

 長らく日本の茶道という儀礼(ティー・セレモニー)に携わってきた者としては、このような20世紀後半から広まってきた記号論・構造主義の潮流からのクリティークを参照しつつ、アートとしての茶道の体系を、この神話論理から生み出された言語行為(ディスクール)として捉えることが一つの不可避のテーマとなりました。

この神話論理の体系を用いて、茶室で鑑賞する茶道具からの連想を交差して、かつてのように民族単位ではなく個々人の生活世界のレベルでそれを構築していこうという試みが、‘ウインド・クロッシング’に他なりません。いずれにしろ、それは、この世界に満ち満ちている様々な民族の神話や、ネット環境に氾濫している映像やゲーム等に垣間見られる都市伝説を、全て相互の変換関係として統合的に理解しうる枠組みであると言えます。今回のサロンでは、この神話論理の基本定式を芸術教育学の立場から、‘ウインド・クロッシング’すなわち想像力の交差として理解することを目指していきたいと思っております。 

 

黒川 五郎

第4回

11月20日

(木)

 

「女神信仰から魔女狩り~そして現代での内なる女神性へ」

  講師の所れい氏は、研究会当初にハープ演奏と音楽療法のお話をされて以来、講師として今回4回目になります。

 経歴からも伺えるように、同氏は音楽、臨床心理、西洋哲学、キリスト教、スピリチュアルなど多彩な分野でアーティスト、セラピストあるいはインストラクターとして活躍されている、素敵な現代の教養人です。後半では、講師とユング研究家白田信重氏と当研究会の副会長である赤坂氏の三名によるパネルトークを予定しています。

 

<講師のメッセージ> 

 西洋占星術や、近年比較的親しまれているオラクルカードなどから時間の許す限りさまざまな女神の性格などを取り上げながら、古の女神信仰の豊かさと自由さに触れていきたいと考えています。そして、西洋においての中世キリスト教による、土着の女神像弾圧の歴史とそして近代まで続いていた魔女狩りという集団ヒステリーともいえる社会現象をかいまみつつ、タロットの絵などに隠され伝えられてきた女神崇拝と近代フェミニズム運動を経て、60年代ヒッピー&サブカルチャー世代の成熟後の、現代における女性性の回復と唱えられている男女共生時代の私たちにとって、内なる女神性とはどういう意味を持つのか。トランスパーソナルな観点からもご一緒に探究していくきっかけになれれば嬉しいです。

 

所 れい

第5回

12月18日

(木)

  

「冬至の神話」

今年の冬至は、1222日です。キリストの誕生日を1225日にしたのは、当時の冬至が、1225日だったからと言われています。ローマ帝国の市民たちは、冬至の日の前後を、サトゥルヌス神やシリアから来たヘリオガバルス神の祭りとして無礼講で騒いでいたそうです。さらに、キリスト教の最大のライバルと言われたミトラ教の神話では、ミトラス神は、冬至の日に岩の間から松明をもって生まれてきたとされています。クリスマスも、このような一陽来復を祝う冬至の祭りの一種として、広まりました。

また、ゲルマン人の冬至の祭りは、ユールと呼ばれ、ごちそうを並べて、異界より訪れる死者の霊や魔女やデーモンたちをもてなす祭りでした。古くは、ゲルマン神話のオーディン(ヴォータン)とその眷属が、ワイルドハンターとして、冬の夜に行列をなして訪れてきたものです。ユールは、やがてクリスマスと習合し、さらに、ヴォータンと小アジアの聖人ニコラウスが習合して、ペール・ノエルや冬至じじいとなり、新大陸では、サンタ・クロースを生み出します。

旧暦の11月(霜月)は太陰太陽暦で冬至を含む月です。その霜月に行われる神事として、霜月神楽が、今も続いています。奥三河の花祭り、信州の天竜村と遠山の霜月神楽、遠州の花の舞など天竜川沿いに伝わっています。また神々の話が神話として伝わる宮崎県の高千穂、米良、椎葉では、この季節に夜神楽が行われます。椎葉村は、柳田國男が、一つの奇跡の「ユートピア」と呼んだ焼畑を行う山奥の村です。セミナーの前半では、こうした、古今東西の冬至の祭りと神話について、お話しします。

 

 後半は、ユング研究家の白田信重氏と妖怪研究家の甲田烈氏にご参加いただき、異界との交易と経済の元型について、パネルディスカッションを行います。「市はもと、冬に立つたもので、此日が山の神祭りであつた。山の神女が市神であつた。」(折口信夫「ほうとする話」)とあり、冬は、異界から山人が訪れる時期でもありました。また、異界との交易とも呼ぶことのできる「ポトラッチ」も北米太平洋岸に神話を伴って伝わる冬のお祭りです。有用性の観点でなく、神話と夢(無意識)の文法から、人間の普遍的経済の元型を異界のトポロジーとし描いていこうと思います。

 

小島 史明

 
 
 
 

講師

氏名 プロフィール
白田 信重

「白田石材店」代表取締役社長。当研究会会長代行。

・浅草で100年の老舗石材店「白田石材店」の第四代目社長。早稲田大商学部卒。

 

なかひら まい

・作家・イラストレーター

セツ・モードセミナー卒業。

・『スプーの日記』(トランスビュー刊)シリーズで作家デビュー。

・2010年12月『名草戸畔 古代紀国の女王伝説』を発表。

 Web Site : http://studiomog.ne.jp/nakahira/

 

黒川 五郎

・芸術教育学者、茶道家。

・慶應義塾大学文学部卒業後、教職の傍ら人間形成の芸術論:WINGED CROSSING を構想。以後、青山学院大学講師等を兼任するなど、茶 道をリベラル・アーツとして捉える新たな哲学を展開。

・現在、ティー・セラピー・スタジオ芸術教育学研究所所長。裏千家茶名:宗五。

・著書・論文:『新しい茶道のすすめ』(現代書林、2009 )、『学校空間の研究』(コ スモス・ライブラリー、2014:岩間教育科学文化研編、共著)他。

・当研究会顧問

http://tea-therapy.com/index.html

 

所 れい

・RHIヒーリングハープセンター代表

ヒーリングハープ・アルケミスト。認定心理療法士、ジェネラティブ・コーチング認定療法士。

・癒しと安らぎのための演奏法「ヒーリングハープ・メソッド®」と変容のための療法「ハープ・アルケミー®」を創始。1995年より心・身・魂をトータルに癒しと変容のためのホリスティックな表現・芸術・音楽の心理療法の研究と各種心理療法を行う。日本初ヒーリングハープ®プラクティショナーとして、病院、ホスピスなど病床演奏活動を行うほか、ハープ・アルケミー療法、ヒーリングハープ・メソッド®による芸術音楽表現心理療法を軸にトランスパーソナルな療法での公演、セッションを行う。日本初、ヒーリングハープ病床演奏士のための認定プログラム開講中。

 

Healing Harp Therapy CDシリーズ:Vol.1『 Healing Harp ~Breeze through Holy HeartVol.2 『The Moment of Transformation変容の瞬間(とき)』Vol.3The Love Letters From The Planets惑星からのラブレター』

・著書:『こころの癒し~スピリチュアル・ヒーリング~医師・科学者・セラピストによる未来医療への架け橋』共著(出帆新社2006『あなたに幸運の女神が舞い降りるCDブック~ヒーリングハープセラピー』 所れい著 ビジネス社(2009)月刊誌『ゆほびか4月号』巻頭特集(2011)『ヒーリングハープアルケミーCDムック本』(仮称)マキノ出版(2013)他。

・認定心理療法士、NLPマスタープラクティショナー、 ジェネラティブ催眠療法士 日本トランスパーソナル学会会員、日本芸術療法学会会員、 日本音楽療法学会会員、上智大学文学部哲学科卒。元JAL国際線客室乗務員。当研究会顧問。

http://healingharp.jp

 

小島 史明

アルファコンサルティングオフィス代表

 

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