2018年(前期)テーマ『現代におけるリベラルアーツの様相』

日程および会場は都合により変更になることもありますので、ご参加の際は当HPをご確認ください。

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第1回

2月15日

(木)

輸入された『音楽』を通して『日本』を考える〜創作を通じて日本の深層を浮き彫りにする面白さ〜」

 

講師からのコメント:

皆様はじめまして。作曲やピアノ演奏で音楽活動をしております、ワキマル・ジュンイチと申します。

今回は、当会理事の海野さんとのご縁でお話をいただきまして、大変光栄に思っております。

本講演では、僭越ながら私の作品を使わせていただきながら、音楽を皮切りに日本という国や風土、

またはその文化について、みなさんと一緒に考えることができたらと考えております。

第1部は、日本という国・風土・文化について考える面白さについて、私自身が作曲という行為を通して思ったことを、日本に輸入された楽器の変遷や、西洋と日本の文化の違いなどのお話を交えて進めていきたいと思います。

第2部は、第1部でお話しした内容をどのように自分の作品に反映させているか、ということをピアノを使って、自作品の演奏の他、即興演奏も含めたミニ・コンサートという形でお届けしたいと思います。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

推薦者からのメッセージ:

2018年第1回ユングサロンに講師としてお迎えするワキマル・ジュンイチさんは、作曲家のみならずソロやユニットでのコンサート、レコーディングなどでピアノ奏者としても国内外で広く活躍されている音楽家です。

講師から、これまで音楽を創出されるにあたって音楽以外の芸術や日本の文化、哲学やユング思想などに興味を持ち、ご自身の中に取り込んでこられたというお話を伺い、その理由をお聞きしたところ、「極めて簡単な言葉を使えば、面白いからです」と。この言葉を耳にした時、私は『面白い』という言葉に潜在する奥深さとエネルギーを見せられた気がしたのです。

『面白い』から深く探求し延々と追求し続けられる。そして、なにがしか答えや結論に行き着いた時、新たな『面白い』と出会うのだろう。『面白い』こそが作品に命を吹き込む源泉となるのかもしれない。

そんな『面白い』という思いを胸に数々の作品を生み出されているワキマル・ジュンイチさんの講演は、眼の中に色彩のある映像が浮かんでくるような美しく表情豊かな音楽とともに会場の皆様を『面白い』世界に誘ってくれることでしょう。

どうぞ皆様、お友達などお誘い合わせの上、是非当サロンへご来訪ください。

 

                 ユング心理学研究会 理事 海野裕美子

ワキマル・ ジュンイチ氏

第2回

3月15日

(木)

 「いのちのリズムと芸術としての人生」

~ユング向性理論の生涯発達心理への適応性~

 

 講師の岩間浩氏は、今回初めて当サロンでご講演頂きます。当研究会顧

問で哲学者・茶道家の黒川五郎氏のご推薦でご登壇の運びとなりました。

岩間氏は教育学者で、元国士館大学教授。現在は岩間教育科学文化研究所

を主催し世界新教育学会の副会長も務める、いわばリベラルアーツの専門

家。ユングを独自の着想で発達心理学へ取り入れた著作もある岩間氏の講

 

演をお聞き逃しなく!

 

<講師からのメッセージ>

 私は30歳代に芝浦工業大学及び短期大学で、教育学のほかに発達心理学の講義を担当し、児童期と青年期などの発達時期の特徴を講じていた時、外向性が著しい時期と内向性が著しい時期とが、人の各発達段階を通してリズムをもって交互に繰り返されるのではないかという着想を得た。そこで、ユングの向性論を発達理論に動的に置き換えて各発達時期を考察する発達研究を行い、近年『子どもの心理と生涯発達心理学―発達のリズムとともに―』(学苑社、2010年)にまとめた。

 今回の講座ではユングの向性理論に深入りせず、人生は、内向性と外向性とを繰り返しながら織りなす芸術作品であるという観点から論じることにしたい。

 

岩間 浩

第3回

4月19日(木)

中島みゆき『夜会』の世界 〜能に連なる鎮魂の芸術〜」

 1975年のデビュー以来、数々の名曲を世に送り出してきた中島みゆきは、70年代、80年代、90年代、2000年代の4つの年代でシングルチャート1位に輝いた唯一の女性アーティストだ。彼女のライフワークともいえる「夜会」は、〝コンサートでもない、演劇でもない、ミュージカルでもない「言葉の実験劇場」〟をコンセプトに1989年にスタートし、中島が、脚本・作詞・作曲・歌・主演の5役を務める世界でも類をみない舞台芸術である。本講座では、この「夜会」と本阿弥、世阿弥が確立した「能」との意外な関連性を論ずる。
 

 

■講師コメント:
 落ち込んだとき中島みゆきの暗い歌を聞くと元気になるという話をよく聞きます。みゆきさんは自身の歌について語ることはほとんどありませんが、ユング「赤の書」の記述「死者の声にならない声を聴くことが鎮魂になる」を目にしたとき、これがみゆきさんが歌う理由なのだと直感しました。その後、夜会の世界を知り、直感は確信に変わりました。さて、死者の鎮魂といっても特段なことはなく、万葉集の挽歌、精霊流し、盆踊りなど、日本人は古来からそれを当たり前のように行ってきました。世阿弥が確立したとされる夢幻能も舞台上で、死者(幽霊)が鎮魂されます。夜会も、幽霊のほか、夢幻能の手法である異界の出現、時間軸の逆行、仏教的な教訓などが随所にみられるのです。

阿部美穂

 

第4回

5月17日(木)

「ユング、ヴァ―ルブルク、ベンヤミン ~イメ―ジと象徴の力」

 『変容の象徴』『心理学と錬金術』などのユングの著作は、古来からの宗教・オカルト哲学の著作から引用された、膨大な量のシンボリックなイメージの図版に溢れている。1910年前後から20年代における、グノーシス哲学や錬金術との出会い、及びそれらへの探究が、ユングの心理学の全般に、圧倒的な深い影響と、ことに象徴的イメージの重要性への開眼をもたらしたことは明らかだ。

 この20 世紀前半、「イメージの力」の持つ重要性に着目した多くの人々のうち、美術史家のアビ・ヴァールブルク(1866~1929)と批評家のヴァルター・ベンヤミン(1892~1940)の仕事にも着目して、彼らのユングとの並行関係を考え、現代文化における「イメージ」の重要性を今いちど考え直してみたい。

 

■ 講師からのコメント

 アビ・ヴァールブルクは、古今の象徴に関する文献の膨大な収集による「ヴァールブルク文庫」の開設、そして「ヴァールブルク学派」と呼ばれるグループの筆頭に立ち、またイメージを「読み解く」ことによって過去の文化に迫ろうとする「イコノロジー」という美術史学上のアプローチの確立に、大きな貢献を果たしました。またヴァルター・ベンヤミンは、初期の主著『ドイツ悲劇の根源』でアレゴリー(寓意)を考えることの意義を説き、また後の『複製技術時代の芸術』などの論文で、写真や映画などの視覚文化も焦点に据えながら、現代においてイメージを通じた思考を行うことの意味を繰り返し論じていきました。

 ユング、ヴァールブルく、ベンヤミンの仕事には、20 世紀前半という時代に、「イメージ」を収集し、その底知れぬ重要性と呪術性に光を当てようという、共通した衝動を見てとることができるように思えます。膨大な視覚情報に溢れる一方「ポスト真実の時代」とも呼ばれる現在において、「イメージ」について思考することの意味を、彼らの仕事の共通性を通して、いま一度捉え直すきっかけにしてみたい、と考えています。

 

倉林 靖

第5回

6月21日(木)

 「昔話はいかにパロディ化されるか~ハリウッド脚本術を読む」

 古代ローマにおいて、「技術」(ラテン語: ars)は、「機械的技術」(アルテス・メカニケー、artes mechanicae)と、「自由の諸技術」(アルテス・リベラレス、artes liberales)とに区別されていた。後者を英語に訳したものが「リベラル・アーツ」である。

 では、現代におけるリベラルアーツと「物語」の関係とは何か。物語としての「昔話」や「神話」の性質、パロディやオマージュ、リメイクやリブートといった手法を用いる物語が変容する過程と意味、それらを、芥川龍之介、太宰治の「かちかち山」を題材に考察したい。

 後半では、「スターウォーズ」が参考にしてヒットを飛ばし、何故かビジネス界でひっぱりだこという『神話の法則』(クリストファー・ボグラー著)の中に取り上げられているアーキタイプと物語の関係を見つつ、本当にアーキタイプをなぞれば面白い物語になるのかという点について、兼ねてより興味があると話されていた当研究会会長代理・白田信重氏とともに探って行きたい。

 

    物語を語る者が、社会を支配する。

                     プラトン

 

 原田佳夏

第5回

7月19日(木)

 「哲学で読み解くシュルレアリスム」

 皆さんは現代美術で、よく「オブジェ」という言い方がされるのをお聞きになっていると思います。これは、「シュジェ」に対応するフランス語で、「シュジェ(sujet)」が主体とか主観を意味するのに対し、「オブジェ(objet)」は客体とか客観を意味しています。「主観(sujet, subject)」「客観(objet, object)」というのは、哲学者たちがギリシア時代から現代に至るまで論じているテーマですが、シュルレアリストたちもこの問題に逢着したと言えます。私たちの目にはシュルレアリストたちの作品があまりに個性的で「主観的」であるかのように見えるかもしれませんが、彼らはむしろ「主観」を徹底的に排除し、いわば忘我の境に純粋な「オブジェ」が現れるのを描き出したのです。そこで今回は哲学の観点から、シュルレアリストたちの意識がどのようなもので、何を表現しようとしていたのか、考えてみたいと思います。 

 

参考文献

 

巌谷國士著『シュルレアリスムとは何か』, ちくま学芸文庫, 2002.

 

 岡野利津子

 

講師

氏名 プロフィール

ワキマル・ ジュンイチ

(作曲・ピアノ)

日本大学芸術学部音楽学科作曲コースを経て、日本大学院芸術学研究科(音楽芸術専攻作曲コース)修了。大学院修了後、楽曲提供やアレンジ、ライブでのサポートの他、音楽アーティストのアルバム・プロデュース等を行っている。

2011年より、邦楽ユニット・HIDE×HIDE(尺八:石垣秀基/中棹三味線:尾上秀樹)のアルバムやコンサートにピアノ演奏の他、アレンジや作曲で参加し、現在も継続中。

20123月〜4月にかけて、HIDE×HIDEロシアツアーに同行し、モスクワやサンクトペテルブルクを含む全6カ所でピアノ演奏を担当。その後も日本やロシアの他、スペインやリトアニア、クロアチアでの彼らの演奏に参加。

2011年のアルバム発売以降、『Piano+2016)』、『Aeolian piano2017)』と自作品の発表を主に活動の中心としている。

2011年、自身のピアノ曲や室内楽曲を中心としたアルバム『Piano music & Chamber music』を発表。

2012年、元鼓童の和太鼓奏者である金子竜太郎と”feiz(フェイズ)”名義でアルバム「Rebirth」を発表。

日本大学芸術学部学部長賞受賞(卒業時)、第15回国際ピアノ・デュオ協会主催国際作曲コンクール音楽之友社奨励賞受賞(2009

 

(主な作曲作品)

color No.3 for Flute & Piano2017)、color No.2 for Flute, Violin, Cello & Piano2017)、metamorfosi for 2Vn, Cello & Contrabass2014)、Imagined landscape for 2 Alto Recorders & Piano2014)、メゾソプラノとバス、ピアノのための『夢の中の夢』(2014)、SKY for Flute, Violin, Cello & Piano2012)、color for Flute, Violin, Cello & Piano2011

(主なサウンド・プロデュース、その他)

 

鈴木慶江(ソプラノ)「Operatic Fantasy2016/販売:Hats unlimited)」、宝海大空(大衆演劇)「Japanesque2016/販売:Universal music)」、NHK-BSNHK WORLD TVNews Today Asia」(テーマ作曲)、NHK総合「海外ネットワーク」(全曲アレンジ)、NHK総合「ゆうどきネットワーク」(BGM作曲)、CX「金曜プレステージ」(テーマ作曲)、CX「トロと旅するthe movie」(主題歌アレンジ)

 

岩間 浩

教育学者、発達心理学者、元国士舘大学文学部初等

教育専攻教授、世界新教育学会副会長、岩間教育科学文化研究所主催。

著書:『ユネスコ創設の源流を訪ねて』学苑社、『学校空間の研究』(共著)コスモス・ライブラリー、シュプランガー著『小学校の固有精神』(和訳)青山社ほか

 

阿部美穂

 山梨県出身 山梨大学 工学部卒

 消費生活アドバイザー、抽象絵画作家(ニューヨークCaelum Gallery、上海風月舎画廊で作品展開、上野の森美術館、金沢21世紀美術館等で展示実績)日中桂林芸術交流協会員、日中現代芸術交流協会員、パステルファンタジー協会員、東京都消費生活啓発員、港区商品テスト指導員、公社)日本消費生活アドバイザー・コンサルタント・相談員協会東日本支部広報副委員長、日本詩吟学院準師範(所沢吟詠会理事)、ドラッカー学会員。

 

 著作:「モンキー・D・ルフィの「D」はドラッカーだった」(経済界)、「PEACE CREATOR」・「パステルファンタジー」(共著、クオリアート)、「阿部美穂作品集」(風月舎画廊)

 

倉林 靖

 美術評論家・音楽評論家・リコーダー奏者。

 1960 年群馬県生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。1986 年、美術出版社主催「芸術評論」募集で第一席入選。以後、現代アートを主な領域として評論活動を展開する。現在、武蔵野美術大学、東京造形大学、東海大学および東海大学大学院、専門学校桑沢デザイン研究所で非常勤講師。美術評論家連盟会員。森鴎外記念会会員。

 いっぽう、リコーダーを大竹尚之氏に師事、またヴァルター・ファン・ハウヴェ氏に国内のワークショップでレッスンを受ける。これまで評論活動と並行して断続的にリコーダーの演奏・教育活動を続けてきたが、特に2013 年以降、リコーダーの分野にいっそう多くの力を注いでいる。現在、宮地楽器リコーダー科講師。

 著作:「意味とイメージ」(青弓社)、「超・文化論」(日本経済新聞社)、「現代アートの遊歩術」(洋泉社)、「現代アートを聴く」(スカイドア)、「岡本太郎と横尾忠則」(白水社)「新版・岡本太郎と横尾忠則」(ブックエンド)、「澁澤・三島・六○年代」(リブロポート)、「震災とアート」(ブックエンド)、他に共著書・展覧会カタログ執筆等多数。現在、月刊『ギャラリー』誌と月刊『音楽現代』誌に毎月連載・寄稿。

 

原田佳夏

(はらだ よしか)

 脚本家・作家。朝日カルチャーセンター「脚本を書こう!」講師。

 朗読歌劇「そらのおと」所属。著作:「脚本を書こう!」青弓社。

 舞台脚本、映画脚本を多数手掛ける。 

 

岡野利津子

哲学博士

新プラトン主義協会理事、トランスパーソナル心理学/精神医学会理事、西田哲学会、宗教哲学会会員。主な専門は、プロティノス(205 - 270年)と西田幾多郎(1870 - 1945年)の哲学。比較思想。主著『プロティノスの認識論~一なるものからの分化・展開』知泉書館, 2008年(新プラトン主義協会研究奨励賞受賞)。夫、岡野浩(西洋近代哲学, 倫理学, 生命・医療倫理, 社会哲学)と共に、西田幾多郎の鎌倉の遺邸にて、市民の方々を対象にした西田哲学の勉強会(寸心荘読書会)も行っております。

 

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